大学入試の小論文でよくある出題形式に「課題文を踏まえあなたの意見を述べなさい」といったものがあります。あるいは「次の文章を参考にして、〜についてのあなたの意見を述べなさい」「この文章の論点を踏まえ、あなたの意見を自由に論じなさい」など多少表現が違うことがありますが、どれも問題の趣旨は同じです。「課題文を踏まえる」ということができていない人が意外に多いのです。
ここで本文を踏まえるという事はどういうことなのかごく短い文例で考えてみましょう。仮に次のような問題があったとします。
【問題】課題文を踏まえ、「日本人の気質について」あなたの意見を述べてください。
【課題文】日本人は自己主張が苦手な人が多い。例えば会議などの場でも自分から発言する人はほとんどいない。言いたいことをストレートに言う人はむしろ、困った人という目で見られがちだ。
【解答1】私は日本人が、自己主張が苦手だとは思わない。むしろ最近では、何かと自分の意見を押し通す、クレーマーのような人が増えていると聞く。日本人の気質は時代とともに変化してきていると思う。
【解答2】日本人の気質として思い浮かぶのは、時間に正確ということだ。例えば鉄道は1分単位の正確さで運行されている。これは外国では考えられないことで日本人の気質を物語っていると言える。
しかし、しかし解答2は課題文の内容は無視して、問題文の「日本人の気質についてあなたの意見を述べてください」という部分にだけ着目して書いています。もし今回の問題が単純に「日本人の気質についてあなたの意見を述べてください」であったら、解答2でも合格点です。しかし、「課題文の論点を踏まえながら」という条件が付けられた時は、課題文の主張を出発点にしてそこから日本人の気質について自分がどう考えたか、を書かなければいけないということです。
一番間違いのないやり方としては解答の冒頭で簡単に課題文の内容を受けてから、自分の意見を書き始めることです。解答1の例で言えば、
「私は日本人が、自己主張が苦手だとは思わない。むしろ最近では…」
このように冒頭で課題文に対しての自分の立場を明確にしてから、自分の考えを述べています。実際の答案ではもっとしっかり課題文の内容を受けることになりますが、要はこういう流れにするということです。
今回はごく短い課題文でしたが、長いものになるとこの点があいまいになってしまう答案が多いです。課題文付きの小論文は大学入試で最も多用される出題形式です。課題文を踏まえるとはどういうことなのか、よく理解しておきたいものです。
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